■TAKAのボルドー便り■
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17.緑の仕事 ついにデュブルデュー教授登場! |
ここ数日は夏の暑い日差しが照りつけるボルドーですが、先週までは大変涼しく過ごしやすい気候でした。白に関しては収穫も間近です。 さて、葡萄畑では何が起こっているのでしょうか。収穫を待つだけの穏やかな日々が続いている、と思いきや・・・。 7月下旬のある日、デュブルデュー教授のシャトーへ出掛けました。折り悪く、大変神経過敏の状態のところへ出くわしてしまいました。来なきゃよかった、と思っても時すでに遅し・・・。何が彼を苛立たせているのでしょうか。 それはこの時期にやらなければならない、大切な仕事、ヴァンダンジュ・ヴェールトゥがあるからなのです。これは直訳すれば「緑の収穫」という意味で、文字どうりまだ青い葡萄の房を除去して残りの房の成長を育む為に行うわけですが、事はここに書くほどには簡単ではありません。 これを行う時期とやり方が大切なのです。この仕事はトラヴォー・アン・ヴェールと呼ばれるカテゴリーに入ります。これは「緑の仕事」と訳すことが出来るのですが、皆さんがよく御存知のエフイヤージュ(除葉)、その他にはエシャルダージュ(側枝切断)、エクラルシサージュ(除房)等から成り立っています。 これらの目的はいろいろです。その効果は例えば葡萄の構成成分からみれば、糖度はあがるし、色素量も多くなります。また青い香りを持つメトキシ・ピラジンの量が減少します。また衛生管理の点からは果房が密集していないために換気が良く、病気にかかりにくいということが挙げられます。 |
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トラヴォー・アン・ヴェールを一緒に体験してみましょう。 |
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これは5月上旬頃の未来の葡萄の姿です。 この時期からいわゆるトラヴォー・アン・ヴェールは既に始まっています。 |
ドメーヌ・ドゥ・シュヴァリエの畑で忙しそうにしている人に何をしているのかが気になり、声をかけてみました。すると幹から直接に生えてしまった枝を除去しているということでした。 | |
幹の中央の枝を除去した後の写真ですが、枝の跡がわかりますか。 「ほんとにはっきり跡が残っているね」(店主談) |
さてそれから2カ月半ほど過ぎて、葡萄も大分成長しました。 |
シャトー・レイノンのメルローです。 僅かに色付き始めています。 |
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ソーヴィニオン・ブランです。 まだえんどう豆のように硬いです。 |
この時期にトラヴォー・アン・ヴェールは本格化します。 秋の収穫期と同様に何人かでグループを組み、このトラヴォー・アン・ヴェールを行います。教授は収穫期の決定と同じ慎重さでどの区画をいつから、そしてどのようにアタックするかの指示をだします。 |
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「緑の仕事人」が通りすぎた跡です。 これはエフイヤージュとヴァンダンジュ・ヴェールトゥを同時にしています。 |
因みにこちらはまだエフイヤージュを行っていない区画です。 |
違いが良くわかります。 |
エシャルダージュと、エクラルシサージュは教授から解説してもらいましょう。 エシャルダージュは下の写真にみられるような側枝を除去することです。一般には何番目の何処、というように決められています。 |
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除去後の様子です。 |
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エクラルシサージュは意味的にヴァンダンジュ・ヴェールトゥと重なるのではないでしょうか。教授によれば左右で12の数の房を残したい、とのこと。よって余計な果房は除去するのです 。 |
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緑の収穫はヴァンダンジュと同じくらいに骨の折れる仕事だそうです。しかし葡萄の状態を把握するためには大変ではあるけれど自らが行なわなければいけないことを強調していました。 |
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これらの操作よって品種を問わず、青い香りのメトキシ・ピラジンの量がかなり減少します。この確かな事実を教授は3年かけてつきとめました。 ヴィンテージにかかわりなく、この操作をした区画のワインはいつも青い香りが少なかったのです。今、教授はペサック・レオニャン、グラーブ等のアペラシオンにこの成果を適用しつつあります。 |
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今回初めてご紹介いたします。ドゥニ・デュブルデユー教授です。 |
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彼の手によって「ボルドー・ワイン革命」は起こりつつあります。 最後に、お忙しいところトラヴォー・アン・ヴェールの実演をして頂きありがとうございました。TAKAより。 「ありがとうございました。」(店主談) |
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