■TAKAのボルドー便り■

「32.またもデブルバージュ」へ 「34.シャンパン便り」へ

ページに戻る

33.ビー玉と発酵

今回のテーマはアルコール発酵です。
デブルバージュの後に適切な濁度に調整された果汁は、頃合をみて酵母添加が行われ、発酵がはじまります。「エッ、酵母添加なの!」、なんて驚かないでください。特に白ワインの場合は野生酵母、それも素性のわからない酵母に勝手に発酵の主導権を握られては困るのです。
これについては機会が在れば別にお話しましょう。例えば今、ペサックレオニャンで白ワインを産する主要なシャトーは殆ど酵母添加が行われています。
「発酵」をコントロールすることは難しいものです。実験室レベルでは、発酵が始まってほしい時には発酵せず、発酵して欲しくない時には、冷蔵庫にいれてある果汁でも発酵する時が在ります。皮肉なものです。

さて、発酵の様子を順次御覧にいれましょう。

酵母添加直後はまだ果汁は透明です。その時の瓶の底にはブルブ(前回参照)が堆積しています。
果汁の表面も静か。 適切に調整された濁度のブルブ。

発酵が本格的にはじまる前には「お告げ」があります。御覧のように大きなアクのようなものが浮いてくるのです。これを見て、「あっ、始まるな」ということがわかります。
表面の大きなアクのようなもの。 瓶底のブルブの『ざわめき』の始まり。

アクの浮上がなくなり、今度は大きめの泡が立ち上りはじめます。泡の上昇で瓶中に対流が起きてくるので、ブルブの層が次第に薄くなっていきます。果汁が濁りはじめてきたことに注意して下さい。
表面の大きめの泡。 ブルブの層の様子。

さらに泡が絶えまなく昇ってきて、底のブルブはもう殆ど拡散してしまいます。
表面の泡の様子。 底のブルブの拡散した様子。

勢い良く細かな泡が立ち昇っています。発酵が順調に進んでいるところです。
ワインはかなり濁っていますが、これは単にブルブの拡散ではなく、酵母の増殖による濁りです。
サーッという音が聴こえます。 もうブルブはみえません。

さて、実験室レベルでは発酵の様子を追跡する為に毎日瓶の重量を測ります。御存知ですか?発酵が進むにつれて果汁は軽くなっていきます。


果汁中の糖がアルコールと二酸化炭素に変わる、ということは誰でも知ってはいても、ではガスになって出ていく二酸化炭素の為に果汁が軽くなる、とはすぐには結びつかないのではないでしょうか?


瓶に書かれた数字を御覧下さい。結構減るものでしょ。
シャトーでは密度計で果汁の密度を測定して、発酵の様子を追跡します。

発酵が終わりに近づけば ビー玉の登場です。醸造学部ではこれもれっきとした実験器具の一つなのです。さて、一体何に使うのでしょうか?

使い方は簡単、瓶の中にゴロゴロといれるだけです。発酵終盤は二酸化炭素の発生が弱まり、ワインの表面が空気と触れるチャンスができてしまいます。そこでビー玉をいれて液面を上げて、空気との接触面を最小限にするのです。


最初からこの液面で発酵させれば発酵時に果汁が溢れてしまいます。シャトーでは「ウイヤージュ」といって発酵がおわると、同じロットのワインで樽を充たします。コンセプトは同じです。

この方法は飲み残しのワインにも使えるのではないでしょうか。一本飲みきれなければ最初からハーフ瓶に移すという手はあるものの、むしろ「あと1ー2杯だけ飲みたい」という時、新たに一本開けるのに躊躇しなくて済むかも知れません。お試しあれ!

「32.またもデブルバージュ」へ 「34.シャンパン便り」へ

ページに戻る