■TAKAのボルドー便り■

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21.ルモンタージュ

さて、「醸造タンクの機能美」をご覧いただいた後は、いよいよ本題のルモンタージュに入ります。赤ワインの醗酵に於ては欠かすことのできない、重要な作業の一つです。
さて、この写真ですが、教授がどこにいるかはもうおわかりいただけることと思います。


何をしているのかといえば、このタンクの上にしがみついてタンクの下から抜き取った果汁をホース先端のノズルから浮いている果帽に噴出させているのです。これはタンク内の果汁(ワイン)を均一にして、果帽からの色素抽出を促す、という意味を持っています。また酸素を取り込んで酵母のアルコール醗酵の活性を高めます。


この果帽は勿論葡萄の皮なのですが、ただタンクの上を浮いている、というようななまやさしいものではありません。実際にはどれだけの厚さがあるかは測定したことはありませんが、相当なものです。感じとしてはこの上にソーッと乗ったらそのまま浮いていられる、という程分厚いものです。ですから液体部分(ワイン)とこの果皮をいつも接触させる為にこの作業が必要になるわけです。
「教授なのにルモンタージュをしているのは自分だけだ」とは彼の口癖で、そして誇り?です。この写真はデモンストレーションではないのです。念のため・・・。

コンクリート・タンクでのルモンタージュはより危険です。タンクの開口面の高さと自分が座っている間にあまり差がない場合が多いからです。私もレイノンで実習していた時はつい中が見えにくいので、知らぬ間にタンクの開口面よりも下に頭をさげたのですが、その瞬間に頭をハンマーで叩かれたような衝撃が走りました。あれ程教授に絶対に頭を下げるなと注意されていたのですが・・・。
サイダーを飲んでゲップをすると鼻道の奥が痛いのですが、あの何百倍かの衝撃、といえば実感していただけるでしょうか・・・。どんなに気をつけていても少しは二酸化炭素を吸ってしまうので、この作業の後はかなり疲れます。

ところで、タンクから抜きとられたワインは大きな槽に溜められ後、ポンプで上方に送られます。

暫くの間、この手作業が続いた後、回転ノズルを装着して果帽に果汁をスプリンクラーのように降りかけます。

これは別の日のメルロのルモンタージュです。


槽の中を覗いてみれば赤い風船のような綺麗な泡がシュワーッと弾けています。カシスやフランボワーズの香りでむせかえりそうです。
「ほんとに香ってきそうです!」(店主談)

醗酵が進んで来た時のルモンタージュでは炭酸ガスの発生も強く、ただ槽に移しただけでは充分に空気と接触しないので槽のうえから少し酸素を与えてやります。

このルモンタージュは1日2〜3回行うのですがタンクの数が多いだけこの作業は大変な労力を強いられます。
ところで今年は大変素晴らしいメルロが収穫されました。これはレイノンだけでなくボルドー全体の傾向のようです。
「楽しみですね!」(店主談)


研究室に持ち込んだメルロです。房がしっかりしていて本当に立派です。例によってこれをヘタから外してブドウ粒を得ます。まるで黒真珠か大型のキャビアのようです。
大変甘くて美味しく、いくらでも食べられます。

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