■TAKAのボルドー便り■

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25.スーティラージュ(澱引き)

シャトー・レイノンではようやく、マロラクティック醗酵も終了しました。昨年、樽内マロの実験で興味あるデーターが得られたので今年はこれを22樽準備しました。今日はその最初のスーティラージュ(澱引き)の様子をご紹介します。

まずはポンプで樽内のワインを汲み出して、ある条件毎のワインを集めて均一にします。樽に挿入されているステンレス・チューブ先端の吸引部は2〜3センチ程上げ底になっていて、底に沈んでいる澱を吸うことが避けられる仕組になっています。
それでも吸引中は澱が入ってきていないことを確認するためにチューブの透明な部分から光をあてて濁り具合を観察します。
最後の4〜5リットルが澱にあたる部分です。
この色といい、濁り具合といいまさにお汁粉を連想させます。

これをほんの10分程静置させておくと、底の方にはより重いオリの部分が沈澱しているのがわかります。こうなると、もうお汁粉をとおりこしてマック・シェイクのストロベリーというところでしょうか?それ程、粘性があります。
 

この上澄みでも最初の上澄みとくらべれば、ご覧のようにこんなに差があります。

空になった樽はジェット水流で洗浄されます。
樽を乗せて洗浄している様子です。

何樽分の上澄みワインをグループ毎にタンク内に集めた後に、洗浄した樽に戻します。その間もワインを出来るだけ均一にしたい配慮から、タンク内のワインを絶えず撹拌します。わずかな間のタンク貯蔵時でも、細かい澱が沈んでしまうことを避けるためです。
 

これはいわばスーティラージュの為の三点セットと申しましょうか。

大きな漏斗、そして懐中電灯、これは樽の穴からワインの液面の高さを確認するためのものです。慣れれば樽口に耳を当てて、その音程から判断できるようですが。
最後はポンプのリモート・コントロール・ボックスです。ワインが一定の高さに注入されればボタンを押してこれを停止します。

さて、この最後の写真が重要です。
レイノンのメートル・ドゥ・シェのディディエさんがせっかく分け取った澱を私の計算に従って樽に戻しているところです。

これが為に私のこの日の一日はレイノンに釘付けでした。
これが話題彷彿?の「澱引きなし樽内マロ」とでも申しましょうか。
ブルゴーニュではさほど珍しくない?このテクニックでもボルドーではまだその功罪が明らかにされていません。しかし既にポムロールやサンテミリオンの一部のシャトーで行われつつあるようですが、私達はこの技術に科学的にメスをいれたいのです。

技術は進歩するものです。ついこないだまでは誰もが疑わずに3カ月に一度は澱引きするものだと考えていました。
しかし、この伝統的な手法も変えられつつ、変わりつつあるのでしょうか?新技術は私達に素晴らしいワインを恵んでくれるのでしょうか?それともイリュージョンという名のもと、品種香を失った、一見バランスのとれたたくましいワインを産むだけなのでしょうか?

新技術にたよるのではなく、新技術を正しく操る人のセンスが問われるのではないかと考えています。
飲み手の正しい判断がこの技術の未来を語ることでしょう。

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