■TAKAのボルドー便り■

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36.2002年暮れ

今年もあと僅か3日になりました。みなさんの一年間は如何でしたでしょうか?私にとっても12月はやはり慌ただしい日が続きました。まず、3日から5日にかけてアヴィニョンへ行ってまいりました。残念ながら仕事の為にです。実験を中断されたくはないのですが、INRA(フランス国立農業研究所)のカンファレンスの為の招集となれば行かないわけにはいきません。ボルドーからはなかなか不便な位置に在り、乗り換えも含めて列車で7時間はかかります。

アヴィニョンといえばアヴィニョン橋、あの唄にでてくるアヴィニョン橋をやはり見てみたい!恥ずかしながら、唄の歌詞を「アヴィニョン橋の下で踊ろう」と、長い間勘違いしていたことがわかったのです。「下で踊ろう」、というのだから私はてっきり陸橋だと思っていたら、それがローヌ川にかかっているなどとは思いもよりませんでした。知らぬこととは恐ろしい・・・。この日は快晴ですがカメラも構えられない程の強風です。これがあのミストラル(偏西風)なのかもしれません。


カンファレンスは6日まであるのですが、私は一日早く失礼しました。開期がちょうどボルドーでのヴィニテック(一昨年このHPでご紹介しました)と重なり、6日にはスガン・モロー社のカンファレンスでデュブルデュー教授が、私が手掛けてきた樽内マロの結果を発表する日でした。広い室内には200人以上の人達が来聴したようです。いつの時代でも樽に関する興味の強さを伺わせます。カンファレンス終了後は種々の樽で熟成されたワイン・サンプルのテースティングも行われました。

講演するデュブルデュー教授 ワイン・サンプルのテースティング

このカンファレンスの後、私とデュブルデュー教授はもう一つ大切な用がありました。それなのにだらだらと長話をしている教授は本当に手がかかる・・・。彼をその場から無理矢理引き離して、別の会場へと急ぎます。ところが大渋滞に巻き込まれ、タクシーを降りて駆け出すはめに・・・。だから早く出ればいいのにと思うことはもうすでに百回目。

大切な用とは2002年のアカデミー・アモリムのグランプリ受賞セレモニーに出席する為でした。2002年のグランプリ受賞者としてこのHPでも登場したカティが選ばれたからです。信じられないことでした。同様のテーマで2年前に既に私が受賞していたからです。

私個人としては私がすべてを見て卒業させた、初めての博士号取得者だったことからそれを願うことは当然ですが、内心諦めていた矢先の朗報でした。カティ本人は今アメリカに居を構えており、残念ながらこのセレモニーには出席できませんでした。そこで代理として私とデュブルデュー教授が出向いたわけです。

写真は右から醸造学部名誉教授のリベロー・ガイヨン氏、アモリムのプレジデント、タンロ氏、デュブルデュー教授、アモリム財団のアモリム氏、そして私。私としては自分が2度受賞したことにも匹敵する嬉しさでした。その夜は勿論シャンパンで乾杯!


タンロ氏が『ムッシュ・トミナガ曰く「ソーヴィニオンの研究の終わりはまだまだ遠い」』というフレーズをカティの受賞ノートのイントロダクションに書き添えてくれました。

最後はデュブルデュー教授から頂いたクリスマス・プレゼントについて。

12月中旬に届いた、最新卓上型質量分析器(マス・スメクトロメトリー)です。今年の春頃、教授に「もう一台、質量分析器が欲しい」といったらあっけなくOKがでて、こちらのほうが驚いてしまった!今回購入したモデルは非常に高い分解能をもっており、しかし操作はそれほど煩雑ではないのです。それでも年末、年始はこれとの悪戦苦闘は必至です。

デテクターの中を御覧下さい。美しいと思いませんか。私だけでなく、ラボにいるみんながその眺めにみとれておりました。「素晴らしい方法、高性能な器械は美しい筈である」、というのが私の持論です。

このガラスの中(左下)は超高真空に保たれています。なぜガラス貼りにしなければならなかったか?別に見せびらかす為ではありません。普通、質量分析器は2つの動作モードが選択できます。ちょっと専門的ですが、EI(エレクトロン・インパクト)とCI(ケミカル・イオニゼーション)の2つです。しかしモードの切り替えには真空を一度常圧に戻して、部品を差し換えます。しかしこのニューモデルは真空状態のままソンドを挿入しガラス越しにみながら部品交換ができるという画期的なものです。すみません、嬉しくてつい説明に力が入ってしまいました。

この器械がなんの役にたつか?、ですが、それこそ数えきれない応用が考えられます。例えば、超微量物質の同定です。まだまだ未知の香の物質が発見されずにワイン中に存在しています。これらの発見の強力な手助けをしてくれます。2003年はこの器械で、暴れまくります!!

2002年の「Takaのボルドー便り」はこれで終了させて頂きます。一年間、ありがとうございました。良いお正月をお迎えください。Taka。

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